特集

日本を美しくする会 理念を具現化するビジョン

日本を美しくする会本部提案
提案者 副会長 白鳥 廣瀬

30年の振り返り
 「掃除道」の広がりとともに、人生が、学校が、会社が、地域が良くなった例が数多く生まれ、さらに海外にも伝わり、掃除は今や大きな社会運動となってきました。
 これも、掃除の普及にご尽力いただいた鍵山秀三郎相談役をはじめとする諸先輩方や、活動に参加してくださった皆さまのお陰であると、深く感謝しております。

新たな30年に踏み出すにあたって
日本を美しくする会のビジョン
 鍵山相談役は数年前に体調を崩され、今ではご指導をいただくことが叶いません。私たちは、鍵山相談役に頼り切っていた過去から意識転換し、これからは相談役が求めたるものを求めて、一人ひとりが自立して自分たちの力で掃除の継続と伝える努力をしていく必要があると思います。
 会の理念「掃除を通して心の荒みをなくし、世の中を良くすることが私たちの心願です」に基づき、次の30年を見据えた、当会のビジョンをお伝えします。
1 掃除の意義
 活動の拠りどころであり、すべての基本です。自己修養(心みがき)と社会貢献(SDGs)であり、日本の美しい文化であることを、今一度確認したいと思います。
2 掃除実践
 私たちの活動の中心です。
 (1) 学ぶ会の活動の活性化
高齢化による後継者や参加者不足に悩む会が増えています。実状と課題を整理し、各会と本部で共有していきましょう。
 (2) 連携強化
ブロック大会や年次大会などで、県内やブロック内で人や道具の交流を進め、連携を強化しましょう。
 (3) 広く自由な交流
全国定例掃除会のリストができました(「清風掃々」46)。会員はもとより、志を同じくする他団体とも交流していきましょう。
3 「伝える」力  情報力
 実践と学びは両輪の和です。
 伝わる会にしていきましょう。
(1) 「清風掃々」
  「深めると広がる」
  各地のさまざまな話題を探し、掘り下げ、感動する記事や役立つ情報を多くの人に届けます。
(2) ネット(ホームページ、SNS)
これからはITの時代です。不特定多数の人、特に若者に広めるのに有効であり、「清風掃々」との役割分担をおこないます。
 (3) 出版などの広報
相談役の新刊や講演などが望めない今後、誰にも読んでもらえる、一般社会にも通用する広い意味での広報が求められます。
4 人材育成(人づくり)
 人材育成がこれから、一層重要になってきます。多様な人々が参加し、明るく楽しい環境で意見交換をしていきましょう。
 (1) 若者
これからの会を担っていく若者を育成するために、ともに学ぶ機会を作っていきます。
 (2) リーダー
ブロック研修などを利用し、掃除の意義やリーダーの心得などを学んでいきます。
 (3) 講師
自ら実践し学んだ方々に、会の内外で掃除や生き方を伝える伝道師として活躍していただきたいと思います。
5 学校(教育)
 (1) 啓発資料
「道徳教育に掃除の活用を」働きかけます。それを後押しする啓発資料をつくります。
 (2) 「便教会」や「鍵山教師塾」
先生方の掃除実践をサポートしていきます。
6 海外展開
 過去の多くの活動を整理し、「清風掃々」などでお知らせします。
 そして、チームをつくり活動を進めます。日本の美徳「掃除文化」を海外に広める活動は、今後も続けます。
7 その他
 国会掃除に学ぶ会を再開継続します。また、各方面での計画と活動を全体で共有していきます。

月刊『致知』座談会

掃除道30年、
歴史をつくって、なお歩まん

日本を美しくする会
会 長・利  哲雄
顧 問・田中 義人
広報部・縄田 良作

月刊『致知』2023年10月号
 致知出版社様の許可をいただいて、抜粋(一部編集)を掲載いたします。
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■国内や世界に広がる掃除道
 現在全国に98の地方の会を数えます。30年を節目として、若い方に掃除道を浸透させていくことだと思っています。
田中 「失われた30年」とよく言われますが、私たちは「充実した30年」を歩むことができました。
■会社が良くなった
田中 全社挙げて掃除に取り組むと、整理整頓が進み、不良品が減り、仕事の工夫が生まれ、コミュニケーションもとれ、体質改善が進みました。
 バブル崩壊後私の会社はどん底でした。鍵山相談役に掃除のご指導を受けたとき、会社が存在する意味を聞かれました。「売り上げや利益、給料を上げ…」と答えると、「そういうことは小学生でも言えますよ」と(笑)。「一番はよい社風をつくることです」とのご指導に目が覚めました。それから掃除を導入して、会社は救われました。
■学校が良くなった
田中 少年非行が深刻だった広島で20年以上前、県警警察官だった竹内光弘さんは、一緒にトイレ掃除をやることで少年犯罪を減らそうとされました。ある中学校で先生方が激しく抵抗される中、第1回目の掃除大会に360人が参加し、3回大会をして、暴走族は1年後にゼロになり、29年ぶりの運動会が開催できるまでになるんです。掃除によって学校がここまで変わるのかと思うくらい、驚くべき変化でした。
縄田 この物語を『トイレ掃除の奇跡』(共著)で致知出版社から出させていただきました。子どもが道を踏み外すのは、大人の責任だと感じました。
■社会が良くなった
田中 新宿・歌舞伎町、2004年1月200名以上が集まり、街頭清掃が始まりました。マンホールを開けると、吸い殻や財布、ねずみの死骸や注射針まである。店舗入り口の踏み板の下などを、地面に這いつくばって綺麗にしていきました。
縄田 新宿警察署管内の犯罪発生件数は3年間で30%減り、その後も下がり続けたと聞きます。街がきれいになると人の心が変わり、犯罪も減っていくのですね。
■鍵山相談役に学んだこと
縄田 中国での講演で、学生が「私たちは大学を出て大きなことをやりたいのに、どうしてゴミを拾うのですか」と質問しました。相談役「あなたは多くの人が待つバス停でゴミを拾うことができますか。私はできます。私には大きな志があり、ゴミ拾いのようなことが社会をよくすることにつながると思います」と。上の立場と下の立場の姿勢を学びました。
田中 会社で製品クレームが発生したとき、相談役は「トップ自ら現地に出向いて謝罪することです。言い訳したり責任転嫁してはいけません。お金は取り戻せますが、信用と社員を失うと取り返しがつかない」とアドバイスされました。
 相談役からよく「人に喜んでもらうために時間とお金を使ってほしい」と言われました。そういう教えを日々実践し、よりよき日本を後世に残していくことが、私たちの相談役への一番の恩返しであり、務めなのではないでしょうか。

【読者感想】
・ 世の中の荒みをなくしたいという目的が明確です。
・ 掃除によって、人が街が学校が変わった話に、説得力と力強さを感じます。
・ 赤線を引きながらじっくり読み、「リーダーの徳」の箇所で、壮大な理想を掲げ努力を傾ける相談役、人々を感化する理想の姿です。
・ 心に残ったのが、お3方が語る鍵山相談役のすばらしさです。稀有なほどの「言行一致」、暴力団の恫喝にも動じなかったり、レストランで食中毒が発生したときの素早い対応など。
・ 「日本を美しくする会は相談役が社会に残された子孫。最大の課題はこの子孫をどのように育てていくか」に心揺さぶられました。
・ 「よき掃除の伝統をいかにつなげるか」人材の育成はどの組織も課題ですね。

掃除の海外展開(1) 海外現地研修

日本を美しくする会 海外チーム

 現地研修は1996年に始まり、26年間で79回、延べ3,100名以上の仲間が参加しています。国内同様「志のみ持参の手弁当」で、年間2~4回渡航し、掃除を通じた交流を進めてきました。


海外研修の始まり
 きっかけは、1995年の阪神淡路大震災の大阪掃除に学ぶ会の復興支援に、ブラジル在住の飯島秀昭さんが参加されたことです。飯島さんは、避難所のトイレを一心不乱に掃除する仲間の姿を見て感動し、その感動をブラジルの仲間にも伝えたいと思って、鍵山秀三郎相談役にブラジルへ出向いての指導をお願いされました。
 翌1996年末、相談役を含む19名が出向いて、サンパウロ市内の公園のトイレ掃除をおこないました。それ以降、現地在住日本人が中心になって活動を続け、2005年ブラジルで第1回世界大会が開かれました。(写真)


「現地化」が重要
 その後、中国、台湾、ニューヨーク、ルーマニア、イタリアなど、各国に広がっていきました。当初は現地在住日本人との交流が主でしたが、今も続いている台湾、ルーマニア、イタリアなどでは、現地の人が進めています。これは日本でも同じですが、熱意ある現地推進者がいて、現地の人々に掃除の効果と楽しさを伝えているからです。
 これら各国の様子は今後本誌で紹介していきます。


課題と今後
 日本人はあまり意識していない日本の美徳「掃除」ですが、今後とも海外に伝え続けたいものです。
 日本同様コロナや推進者の高齢化もありますが、今後活動をどのように維持発展させていくか。
 このたび、会に海外チームをつくりました。活動と発信強化を戦略的に進めたいと考えています。