「トラックドライバーにも言わせて」

橋本 愛喜 新潮新書

 指一本で品物が届く便利な世の中、日本の貨物輸送の9割以上がトラックによるとされます。
 トラックドライバーは、駐車違反を気にしながら荷物を抱えて走り、ドアベルを鳴らすも反応がない…「再配達」に。これら「課題」の主な原因は、消費者です。

トラックドライバーのマナー違反

①路上駐車
 大きな体で道路をふさぐように留まっているトラックは邪魔な存在だが、これはサボっているのではなく、「時間調整」なのだ。
②駐車中のアイドリング
 エンジンを切れないのは、「夏は大変暑く、冬は至極寒い」から。「クール便」では、エンジンを切ると冷蔵冷凍機能も切れてしまう。
③ハンドルに足を上げて休憩
 荷積みをして夜ひた走り、休憩場所を探し、停める。時間を気にしつつ、到着するころには睡魔も疲労も出る。荷降ろしまでの短い時間、狭く不安定な座席で休憩する際、「足上げ」をする。
 これは、足を心臓より高くして、長時間運転で生じた「ムクミ」を和らげ、エコノミー症候群の対策でもある。「足上げ」姿は、過酷な労働環境の表れなのだ。
④ポイ捨て、立ちション
 ドライバー自身、多くがマナー違反として「ポイ捨て」を挙げた。
 特に恥ずかしいと嘆くのが「用を足したペットボトル」だ。サービスエリアやコンビニでも駐車できず、トイレに行けないこともある。
 しかし、それを車外に投げ捨てることは別問題だ。トラックドライバーはこうした行為をなくし、仕事の社会的地位を上げていかなければなりません。


「スピードは出すな」
「途中休みも取れ」
「でも遅れるな」
「早くついても近くで待つな」

 トラックドライバーの仕事は、「運転」に加え「荷物を安全・定時に届ける」責務もある。一番気を遣うのが「時間」である。
①時間調整
 「延着」は、事故の次に犯してはならない。渋滞であろうと台風が来ようとひた走り、到着すれば、搬入まで「休憩」という名の時間調整を行う。反対に、「早着」もやってはいけない。
 現場では、荷主が受け入れ順番を決め、トラックを待たせる。近所迷惑という理由で、「現場近くでの待機」も禁じる。そこで少し離れた路上に、彼らの仮眠・休憩姿があふれるのだ。
②法令の問題
 4時間走ったら30分間休憩(通称「430」)や、運転1日9時間以内などがある。また、駐車違反の取り締まりが強化され、働き方改革の基準も年々強化されている。
 これらは本来ドライバーを守るための規則なのだが、一方では、休憩を「取らねばならない」などの心理的疲労につながる。
③高速道路の「深夜割引」
 ETC利用車は、午前0時から4時の間利用すると、料金が3割引きになる。
 問題は、まず迷惑駐車だ。「0時まで高速を出るな」と指示する業者も多く、サービスエリアでは大型車の駐車マスが不足し、路肩などに違法駐車する。
 また、割引を受けるために早く出勤し、途中時間をつぶすために、長時間労働となる。
④手荷役
 「荷物を降ろすまでがドライバーの仕事」と考える荷主が多く、契約にない仕事もさせられる。肉体疲労、腰痛の原因になる。
⑤再配達
 急増する配送需要の最大要因が「ECサイト(ネット通販)の普及」だ。さらに「再配達」が追い打ちをかけ、その率20%。これは彼らの首を絞め、日本の労働効率とエネルギーのムダを生じている。
 最後に、トラックドライバーの職業病は、腰痛と睡眠障害が多い。
 消費者の我々は、「届いて当たり前」から、「届けてもらっている」へと意識改革すべきだろう。