静岡便教会十年の歩み(3)
私の心願「教育改革」

静岡便教会 代表 柿島 由和

 静岡便教会10年、私は掃除に出会って人生が一変しました。下坐行のトイレ掃除や多くの善友との交流により、私が歩んできた道は間違っていなかったと確信し、全身に力が漲ってきました。
 教師人生が残り半年となった今、つくづく思うことは、「教育」は国家経営の大元であり、家庭、社会、学校の三つの教育の中でも、特に「学校教育」の改革は、「教員改革」だということです。

あいさつすらできない教師

 30数年の教員生活を送って、「教育改革は教員改革」と断言します。教師は、教師である前に「良識の社会人」になること。子どもに知識を教える以前に、教師自らが人格陶冶に努め、「人間力の向上」を図ることです。
 社会人経験ゼロの人間が、いきなり「先生」です。まともに挨拶ができない、屁理屈や講釈ばかりで実践が伴わない、見て見ぬふりをする管理職など、教師の問題は、数え挙げればきりがありません。「人間は環境の生き物」ですから、生ぬるい組織に浸かっていれば堕落します。一例は「あいさつ」です。あいさつさえできない教師が多いのです。
 「先生方には、せめて子どもに負けないくらいの生気のある朝のあいさつを、帰りには生気のある明日の出会いを期待したあいさつを、お願いしたい」(「東井義雄一日一言」致知出版社)
 教え子の手紙にありました。「あいさつをしても、返してくださらない先生もいます。柿島先生から気持ちのいいあいさつが返ってくると、すごく嬉しいです」

「教員採用試験制度改革」提案

 「教員改革」の最重要項目と考えます。「教師になる前に、最低3年以上の社会人経験のある者」という採用条件を提案します。特に、営業職、接客サービスなど「お客様に頭を下げる職種」が適当です。
 勤務先には、「勤務態度、教職への適性所見」を記載してもらい、本人は3年間の社会人経験から学んだことを論文にします。さらに、民間企業人が面接する口頭試問を受けます。そして5年間の試用期間を経て、正式採用は30歳とします。試用期間中に、適性を見る制度です。
 大学を卒業して3年働いても25歳、今後定年延長が進めば、30歳で正式採用しても約40年教員生活があります。「頭でっかち人間より人の気持ちがわかる謙虚な人間集団」に変えていくことです。管理職登用も、懸命に働く先生方のやる気を殺ぐ学閥などの慣習をやめることです。

その他制度への提言

 「日本語が通じない」生徒が増えています。小学生までは母国語をしっかり身に付けさせ、併せて「道徳」「正しい歴史」を教えることが、道義国家日本の再生に必須です。教師の言葉も乱れており、職員室でも「やばい」「マジ」などの言葉が乱れ飛んでいます。「日本語の乱れ」は、間違いなく教育力の低下を招きます。
 「男女共同参画社会」「男女雇用機会均等法」などにより、ほとんどの学校が男女共学になり、学力の物差しによる序列化が進み、特色ある教育が失われています。
 「18歳成人」「18歳選挙権」、さらに「女性の管理職比率3割」などの施策も進んでいます。女性男性問わず、能力・資質に応じて登用するべきです。
 高校では、大学入試に必要な5教科以外はどんどん削られて、家庭科はわずか2単位、高校3年間で修める全単位のたった2%です。食事、洗濯、裁縫、育児からライフサイクル、住宅ローンなど「生きる力」を育む「家庭科」は、週5単位毎日学習すべきです。特に「食育」は、「ご飯の炊き方」から、動植物の命を「いただきます」から、生産者や料理者への感謝を教える、「心を育む教科」としても重きをおく必要があります。
 「教員免許更新制度」は廃止すべきです。3万円払って30時間の講習を受けますが、制度の主旨「教員の資質向上」に役に立つかどうか疑問です。学年主任や教務主任を務めると、「優秀教員」として免許更新が免除されることも問題です。

教え子からの「宝物の手紙」

 教え子たちとは、卒業してからが本当のつき合いだと思って、ご縁を繋いできました。

 「この高校で良いと思う先生に会ったことがなかったけど、柿島先生は、人間として強く生きるものを教えてくださいました。私は先生と会って変わりました。他の教師から批判されたとしても、先生が正しいと思う方向に進んでください。心から応援しています。先生は『高校教諭』なんて枠に収まらないくらいすごい人です。看護師になったら、看病するので来てください」
 「ご活躍をフェイスブックで拝見しています。子育て、仕事、自分の夢を実行していくなかで、先生がくれた資料や言葉のカレンダーに力をいっぱいもらっています。熱い気持ちを持つ大人が周りに少ないのです。私もお店に来るお客様に、自分の想いを伝えていきたいです。先生は人間パワースポットな気がします」
 「お話に涙が出そうなくらい感動しました。高校3年になって本当の先生に出会えたなって思いました。人生で役に立つことづくしでした。自分は本当は何がしたいのか、はっきり決められたように思います」
 「とてもためになるお話ばかりでした。これから受験で悩みも多くあるので、相談にのってください♪ 数学も教えてください。いつも笑顔でいられるよう、がんばります!!」
 「普段知ることのない銀行のことや、社会に出て苦労したことなど、先生のお話は学校中の生徒に聞かせたいくらい心に残りました」
 「先生がニコニコして元気にあいさつしてくれると、受験勉強や進路で悩み疲れていても、一気に気持ちが晴れ晴れとします。『金持ちではなく人持ちになれ』という言葉に、とても感動しました。私も信頼される人間に成長したいと思います。父と母に先生の話をしました。先生のお話を聞いて、自分の何かが変わった気がします」

 次は2019年(令和元)に石巻支援活動に参加した生徒で、鍵山相談役の「続・凡事徹底」(致知出版社)を贈りました。

 「掃除の素晴らしさや学校では教えない様々な大切なことを教えて下さいました。高校に入り、朝早く明るい挨拶の方向を見ると先生が掃除をしていました。口だけではなく、行動で大切なことを伝えて下さる、そんな柿島先生が尊敬する方が鍵山さんだと知り、尊敬している人の尊敬している人ってどんな人なのだろうと思いました。『続・凡事徹底』の、『自分の世代だけのことを考えていたんでは、先祖に対して申し訳ない、後世の人たちに対して申し訳ない』という言葉に、はっとしました。今だけのため、自分のためにだけに時間を使えばよいという考えではいけない、と気づかされました。私はまだ一人で何かをやり続ける強さを持っていません。だから尊敬する柿島先生の後を追っています。先生に近づけるよう、そして先生の尊敬する鍵山さんに近づけるように、掃除をやり続け頑張りたいと思います」

 教育者は幸せな生き物である。たとえこの身が亡んでも、一生教え子の心の中で生き続けることができる。

(完)(416-0947静岡県富士市宮下414-2)

2017.12.24 「ふじクリーンパートナー」富士駅140名