掃除道に生きる(3)

日本を美しくする会
顧問 田中 義人

会社の掃除事例

 私どもの会社で、ガス漏れが臭く、不良が多く深夜残業が多いなどで社員が辞める、赤字の職場がありました。社員は掃除を嫌がりましたが、無理にさせてきれいにしました。すると不良が減り、定時で帰れるようになりました。これだけやるのに、実際は何か月もかかりました。
 環境が良くなると、社員の意識が変わります。掃除の外部委託では、いくら外見がきれいになろうが、「気づく」心が芽生えません。掃除を通して、自ら環境を変え、その結果「自己変革」を起こすことが大事なんです。家でいえば家風、会社でいえば社風を良くすることです。

学校の掃除事例

 長野県では、毎年10校近くが活動を発表し合う「中学校掃除サミット」をしています。それを見るのが楽しみでよく行きます。愛媛の会では子どもが多く、ゼロ歳児から来ます。掃除をすると、子どもは本当に生き生きします。まず「よう来たね」って褒めます。いい加減に褒めると、すぐ見破られます。本当に良かった時に褒めると、喜んでやります。

街頭清掃

 博多駅(「清風掃々」第36号)、京都(同37号)などは活発です。一番すごかったのは新宿歌舞伎町で、きれいな街にして、犯罪は大きく減りました。(同37号)

海外の掃除事例

 活動は、ブラジル、ニューヨーク、中国、台湾、そしてヨーロッパはルーマニア、イタリア、トルコへと広がりました。トルコは、5Sや改善など日本のことをよく知っており、日本の掃除大会にあたる「公共5S」活動が始まりました。掃除は外部の人がして、生徒はやったことがないから、「楽しい、またやりたい」っていうんです。こういうことが人間関係を良くしていくんですね。

ルーマニアの例

 2010年私どもの会社見学に来たジュリアン・ブラッド博士(改善コンサルタント)がすごく感動され、翌年も来社され、「ルーマニアで活動をしたいので来てほしい」と要請されました。そこで、2011年千種専務理事と私と妻の3人で行ったのが始まりです。以後毎年博士主催で、ルーマニア各地の公共5S大会が開かれ、私たちも参加しました。
 上層階級は掃除を行いませんが、上下関係なく行う日本の改善活動に興味を持つ経営者は多くいました。中でもクルージナポカ市のボック市長は、この公共5Sを市民運動にすることに賛同し、市長の娘が通学する学校を提供し、自らも参加しました。
 また同市のロッタプリント社のロッタ社長は、鍵山先生と私のプレゼンを聞いて、「この活動を自分の会社と娘の学校で行いたい」といわれ、驚きました。ロッタ社長は掃除を経営に導入し、社長と幹部が掃除を始めたところ、人間関係が良くなり、現場の雰囲気が一気に変わりました。業績が急上昇し、そしてルーマニアNo1のラベル会社になりました。
 ロッタ社長は教育にも取り入れようと、娘さんの通う学校に話したところ、「絶対に受け入れられない」といわれたそうです。しかし、ママ友3人は子どもと一緒に娘の教室を掃除したら、子どもたちが落ち着いて勉強するようになり、それを見た先生が驚いたんです。
 そして3年目に全校大会になりました。2019年、これを伝統にしようと、学校長とロッタ社長は、23人の生徒と保護者を連れて、京都や恵那に2週間の掃除研修に来ました。大変な費用だったと思います。
 そして、同年学校創立百周年記念事業で掃除をしました。9年でここまでなりました。(写真)
 掃除は、感性を育てる非常に有力な方法であり、人も組織も根底から変える力があります。 (完)