掃除道に生きる(1)

日本を美しくする会
顧問 田中 義人

日本で、親族間の殺人の割合が増えています。親が子を殺す、子が親を殺す。小学生の暴力が増え、児童虐待も増えている。老人もキレる、駅員さんが暴力を受ける。日本人全体、自己抑制力が落ちてきているのではないかと感じます。

戦後、道徳教育がなくなりました。教育現場では日教組が強く、権利主張が強くなって教育がおかしくなってきました。同時に急激な経済成長をし、それが幸せだという世情が生まれました。核家族化が進み家族の躾がなくなっていく。世の中はお金で解決し、自分さえよければという個人主義になり人間関係が希薄になってきたように思います。

日本人の勤勉性は高く評価されていましたが、働く価値観が変わっていくことを心配します。

「働き方改革」では、働く代償はお金とされ、これまで社風としてやってきた早朝掃除や社員教育、社外ボランティアなどが賃金対象となります。過去日本人は、仕事を通して喜びを感じ、お金は人に喜んでもらえた対価でした。仕事が効率主義、実績評価となり、人も機械も同等に扱われるようになりました。

井口潔先生の警鐘

そんなことを考えているときに、九大名誉教授「ヒトの教育の会」理事長井口潔先生に出会いました。今一度人間教育をしなければならない、特に幼児教育が人の基本を作るんだと…。

教育に、無意識下と意識下と2タイプがあるとすると、私は無意識下の教育が大事と思います。子どもが知らないうちに言葉を覚えるようなことです。

井口先生に教わったことから

私は孫と同居しています。幼児は野獣と同じです。何かあると、動物のようにわーっと騒ぎます。しかし2歳にもなると感情脳が育ち、そこに環境で起こることがすりこまれていきます。だから母親の役割はとても重要です。2、3歳までに基本的回路が形成され、動物から人間になりますが、この時期に子どもの心に傷を与えないこと、そして我慢やしつけを愛情を持って教え込んでいくことです。

10歳までは感性教育が大事で、その時期の英才教育などはよくありません。感性を豊かに育てたら、自然と知性が育つのです。「いい生き方をする教育」が先で、次に「役に立つ知識教育」の順序が良いのです。しかし戦後、感性教育を疎かにし、知識教育に偏っていた問題があります。

私の孫育て報告

感性教育を優先させる子育て、それは食、早寝早起き、挨拶、履物を揃えるなどの基本的生活習慣を身につけさせることです。1歳でも教えたら、挨拶も履物もすぐするようになりました。それから分け合うこと、ありがとうをたくさん言うことなどです。それから、子どもの前では愚痴、不平不満を言わないこと、本読みや読み聞かせも大事です。2歳でトイレ掃除をしています。

しかし幼児には野獣性が残っていますから、無理難題の要求にはダメとはっきり言い、泣きわめいても放っておきます。生きる力を身につけるためには、感性教育が大切だと思います。

社員教育の実践

大人も変われます。創業時、よその会社では勤められないような人が来ていました。私は、社員に技術や知識教育をずっとやっていました。うまくいきません。次は、お金でやる気を引き出そうとしました。お金は一時的満足にしかならず、そしてもっとよこせとなるんです。困り果てた末に行きついたのが、森信三先生の「再建の三原則」の教えでした。

「掃除をする、挨拶をする、履物をそろえる」のよい習慣を身につける教育を原点にしました。さらに、人間性を高める本を読む、講演会、ボランティア活動などに力を入れました。すると、人間関係の良い会社になっていき、会社は救われました。感性と知性で、感性に力を入れた方がうまくいくんです。

(つづく)