佳書抄録

「ひたすら鍵山掃除道」(2)

阿部 豊・講演録

私の仕事の決めごと

 「鍵山相談役からご指示があったら、何を置いても即実行」をいまだに実行18年です。相談役はとにかくご多忙で、スケジュール管理には特に氣を遣いました。それでも間違いが起きた場合は、素直にお詫びして詳しく報告しました。仕事のミスには寛大でした。それから、「お便りのお返事は速やかに」を努めております。

世界平和は掃除から

7年ぐらい前、ライオンズクラブから鍵山相談役に講演の依頼がありました。ライオンズクラブは全世界で百万人を超える奉仕団体です。
 日本を美しくする会は、2005年に第1回世界大会をブラジルで実施しました。それから台湾で第2回を行ないました。
 最近は、ヨーロッパに田中義人さんが出かけて行って、とても盛んになってきていますね。イタリアでは相談役の書籍が2冊翻訳出版され、ルーマニアでは特に盛んです。アメリカ、ブラジル、中国、台湾には掃除に学ぶ会があります。ここまで世界に広がってきたのですから、「世界平和は掃除から」ということで、ライオンズクラブとタイアップ出来ればいいなあと思うのです。

鍵山相談役の思い

 相談役の思いというのは、日本人の美徳を取り戻したい、特に未来の日本に期待できる子どもさんです。それで、鍵山教師塾に力を入れております。2018年3月25日の第15回鍵山教師塾で、こういう歌を板書されました。靖國神社に飾ってある戦争未亡人の歌です。
「かくまでも醜き国になりたれ
棒げし人の命惜しまる」
 まさに、鍵山相談役の心情を吐露した内容です。

 次はその時のご挨拶です。


 『半世紀前の日本人は、情によって自分自身を制御していたために、穏やかな社会が保たれていました。情の力が、知の劣っている所を補っていました。戦争によって国土が焼け野原になるという、未曽有の惨禍に見舞われたにも関わらず、世相は今よりも落ち着いていました。
 その後、経済的な国力が強化されるにつれて、教育の場と機会が豊かになり高学歴の人が多くなりました。知の面は向上しましたが、それに反比例して情の力が衰退しました。学歴は高くなり知の分野は著しく向上したのに、総合力である人間力が低下したのです。
 人間力とは知と情の総和ですので、情の面が退化すれば人間力という総和力が低下します。情とは周囲の人に氣を配り思いやる心です。知の不足は情で補えますが、情の不足は知で補うことは出来ません。
 先生方にお願いしたいのは、数値で表すことのできる知のみの教育ではなく、情を育み豊かな人間力の向上を果たす教育を是非して頂きたいのです。
 今の日本では、人から望まれ求められる人が少なくなりました。自分が望むことや求めることよりも、望まれ求められる人の方が大切です。望まれる人になれれば、それは人間力が備わった証です。求められ、望まれる人の育成をお願い申し上げます』

あとがき

 2020年1月25日、伊勢神宮で行なわれた第18回鍵山教師塾に、相談役は以下の切なる思いをこめたメッセージを送られました。

 『先生と生徒が一緒にする「掃除」には、3つの効用があります。
①一緒に掃除するという共同作業により意思疎通が良くなる。
②机上の道徳教科と異なり、教師の率先垂範指導により実践力が身につき、道徳教育として最高の教材になり、これに勝る教材はない。
③共同作業の結果「きれいになった」という価値観の共有が得られ、何事においても全て順調に事がすすむ。反対に価値観の共有ができていなければ、何をやっても滞りが生じる。
 掃除を止めたら、学校は必ず荒れます。その時誰が責任を取りますか。困るのは学校です。文科省は、学校現場のことに無知で無責任です』 (以上メッセージ)

 私阿部は、「微力ではあるが無力ではない」を心に秘め、百歳まで人様のお役に立つように努める所存でございます。有難うございます。

東日本大震災復興支援活動「被災地に学ぶ会」
金華山黄金神社にて(2013.4.27)