第14回 認定NPO法人 日本を美しくする会 総会

  • 日程 令和3年2月17日(水)
  • 場所と人数 計114名 
      新宿安与ホール(リアル)  15名
      TV会議(ZOOM) 73か所 99名
  • 審議 令和2年度会計報告、令和3年度予算など

☆会長挨拶

皆様には、日頃から当会の活動に大きなご支援を頂きまして、誠にありがとうございます。

鍵山相談役がひとりで始めた掃除が、今や国内から海外にまで広がっています。相談役は体調不良で、今は外にお出になれない状態です。私たちも、コロナもあって学校にトイレ掃除の声をかけにくくなっています。そこで、文科省へ働きかけ、活動の新たな展開を図ろうとしています。本日は初のZOOM会議で、執行部で議論してきた「当会のこれから」をお話しします。

☆審議事項

  • 令和2年度 行事・決算報告
  • 令和3年度 予算
  • 理事 退任 丸山修
      新任 塩貝 久 冨田浩志 太田昌浩 縄田良作
  • 監事 新任 鍵山幸一郎

☆報告事項

  • (仮)鍵山掃除道記念誌
  • 広報 「清風掃々」、Web化
  • 海外の活動報告 など

☆鍵山相談役近況 鍵山幸一郎

体調は相変わらず良くなく、ときどきポストにハガキを出しに行く以外、外に出ることもありません。最近は、この日本の将来を以前にもまして案じているようです。複写はがきを、毎日数枚書いています。そして、この人にと思った方に、手紙を添えて本を送っています。父は、まず自分が実行し、その姿を皆さまに見て頂く人生だったと思います。体の利かなくなった現在、「自分にできること」を考えてやっているのだと思います。

☆まとめ

今回は、当会の節目にするつもりで臨みました。従来は東京の会場で定型的な議論を行っていましたが、①全国の世話人全員に参加を呼びかけ②初のオンライン形式で③「自立した掃除道」の方針のもと、参加型の会議としました。

①②は、台湾3名含む北海道から沖縄の114名が参加。③は、理念(表紙裏)・方針(7頁)を定め、掃除の目的・意義、会の方向について、会員に加え教育関係や一般の方も視野に入れたプログラム(下表)としました。

Web会議システム(ZOOM)

執行部は昨年5月から、その後本部世話人会議でも毎月使って、様々なテーマを議論してきました。総会もこれでやろうと決めたのは、その1か月前。大規模なオンライン会議は初めてでしたので、機材準備、プログラム決定、参加者集め、発表資料作成など、執行部中心に関係者は動き回りました。特に意を用いたのは、途中2回のブレイクアウト(分科会の議論)のやり方と参加者集めです。連日電話による参加勧誘を行いました。

本部と単会、遠くの人同士がつながり、コスト・時間が大幅節約できるオンラインを活用し、活動を一層活発化させたいと思います。皆様の意見をお聞きし、反省点を次に生かします。今後ともご支援のほどお願い申し上げます。

(記・縄田良作)

【第2部】日本を美しくする会のこれからに向けて

13:40 会長挨拶
13:45 田中義人顧問「掃除道に生きる」
    ビデオ講話(25分)
14:10 意見交換 (ブレイクアウト)
14:45 日本を美しくする会のこれからに向けて
    ① 相談役からの言葉(5分)
    ② 学校掃除の教育的意義(15分)
    ③ 「学校教育に掃除の活用を」キャンペーン
      街頭掃除の呼びかけ(20分)
15:25 意見交換 (ブレイクアウト)
15:50 全体 質疑・意見交換(40分)
16:30 閉会
16:45     終了

学校掃除の教育的意義

 縄田 良作

25年以上「学校トイレ掃除大会」を各地で開いてきて、掃除には大きな教育的効果があることを見てきました。しかし近年、学校の理解が得られにくくなっています。会員から、学校掃除について①なぜ日本だけするのか。②教育的意義を説明する資料が欲しい、との要望が出ていました。以下、『新・心の教育』(沖原豊著・学陽書房)から引きます。

世界の学校掃除 世界103か国を調査。

①清掃員型(61か国)

「掃除は奴隷の仕事」というギリシャ・ローマ文化の伝統的掃除観と、「学校は勉強するところ」という知育中心的学校観からくる。キリスト教・イスラム教の欧州、米大陸の国々に多い。

②生徒型(34か国)

掃除は人間修行の方法とし、日本などのアジアの仏教国に多い。

③折衷型(8か国)

清掃員、生徒の両方がする。掃除は労働の一環とする社会主義教育からくる。ロシアなどの旧社会主義国。

学校掃除の教育的意義

①人間形成

釈迦の「掃除の五功徳」(自心清浄、他心清浄、諸天歓喜す・・)や「周梨槃特の悟り」の教えがあります。日本の掃除が生徒型である由来は、お釈迦様なのです。

②清潔の習慣

日本人は清潔を愛する国民と言われます。例として、仏教、神道、武道、経営の「5S」、さらに「お茶の心」「出船精神」「W杯での日本人サポーターの清掃」などの「おもてなしの心」があります。

③公共心・協調心の育成

整理整頓する習慣は、「公」のものを大事にする心を育てます。子ども時代に「良い習慣」を身につけることは、一生の財産です。

④勤労の価値を学ぶ

子どもの労働機会が少ない今の時代、勤労の尊さを学ぶ重要性は、教育関係法令でも奨励されています。

「学校教育に掃除の活用を!」キャンペーン

副会長 白鳥 宏明

世話人の高齢化・後継者難、そして鍵山相談役が5年前に体を壊され現場にお出になれなくなり、そしてこのコロナで、活動が衰えていると感じております。状況をお聞きすると、全国100か所以上の単会のうち、活動中は半分にも満たないのではないかと推察します。この傾向はコロナ以前からのことで、私たちは当会の将来に大きな危機感を持っております。

理念・方針の作成と「自立の掃除道」へ

今私たちは、「何のために掃除をするのか」という問いを各自が与えられています。皆が同じ価値観を持つことが必要と考え、執行部などで数度の議論を重ね、理念と方針を作成しました。

「掃除を通して心の荒みをなくし、世の中を良くすることが私たちの心願です」を理念とし、今後各自が自立した掃除を続けていきたいものです。

文科省への働きかけ

一昨年中教審答申が出て、各地の掃除大会が中止されたりしたため、私たちは署名運動を始めようとしました。その後思い違いに気がつき、「学校教育に掃除の活用を!」のキャンペーンに転換し、様々な動きをしてきました。金沢の市山勉様や新潟の村山正文様には、地元の政治家をご紹介頂きました。

昨年末田野瀬文科副大臣に面談し、今年文科省から、土曜日や夏休みなどを使った出前授業「土曜学習応援団」の提案を頂きました。2014年(平成26)に始まり、現在800団体以上が登録しているそうです。これは私たちにとって受け入れやすいもので、賛同する方向で検討したいと思います。

街頭清掃のおすすめ

「密」を避けたトイレ掃除も行われておりますが、屋外で行う「街頭清掃」の実施を呼びかけたいと思います。自宅前の道路、神社、公園、駅、バス停などどこででもできます。大した準備はいりません。声を掛け合ったり、一人でも自由にできる街頭清掃をされてはどうでしょうか。

参加者の感想やご意見

掃除の効果

  • 毎朝1時間掃除をしている。昔は他人の目が気になったが、今は自分が楽しんでいる。
  • 口で説教してもどうしても出来なかった人間教育が、掃除でできると分かった。
  • 現代はいじめ、不登校の人が多い。人に喜ばれて自信をつけ、自己肯定感を持てる掃除は、1つの効果的な方法だと思う。

学校掃除

  • 学校掃除は、大人が一緒にすることが大切。子どもたちに、真面目に生きている大人の姿を見せられ、良い影響がある。
  • メリットを明確にトップの学校長に伝え、感動させないと動かない。台湾では、大学進学の条件に部活・社会貢献が評価される。台美の掃除に参加すると認定を受けられ、進学に評価が加算される。(台湾美化協会)
  • 教員の理解が得られない。理解者を増やしていくしかない。
  • 掃除に理解のある先生が、転任先で校長からストップが入った。結局校長による。
  • 若い人には、20歳代半ばまでに掃除を学んで欲しい。人間的に成長し、人生が変わるのではないか。父の日の行事の父子参加型の掃除もよい。する前と終わった後では、表情が違う。
  • 子どもたちに掃除をするきっかけを作ってあげて欲しい。

高齢化、会の将来

  • 子は親を見て育つ。会社で社長が先頭に立ってやっているところは継続できているようだ。
  • 会員は高齢化と固定化が進んでおり、新たな広がりがない。
  • 次の世代はいない。元気あるシニアで頑張っていく。
  • 鍵山イズムを元にしつつも頼りすぎず、基本に戻り、メンバーも若返るようにしたい。

今回の総会の意義など

  • 全国の方々の顔と名前を確認出来た。それぞれの地域ごとの活動が聞けて参考になった。
  • 共有データを多く集めデジタル化も行い、一般に広げたい。(密にならない)街頭清掃は市民に伝えられる、の意見もあり。
  • 「掃除の世界事情」を初めて聞いた。わが国の文化に対して、新たに認識した印象を持った。

日本を美しくする会の方針 「今こそ鍵山掃除道の普及を」

私たちは、三つの困難を乗り越え、 世の中を良くしていくために、以下のことに努めます。

  • 掃除道を広げる 自分磨きの 先にある自らの徳性の向上を通じて、社会を良くしていく道徳教育に貢献し、日本の将来の為に謙虚な温かい心遣いでお世話をしながら、世界中に広げてほしい。
  • 人生や会社・学校・行政経営に活かす 鍵山秀三郎氏の掃除哲学を今一度よく学び、活かす。
  • 「実践」と「学び」を両輪とする ひたすら掃除に励む「実践」と掃除哲学を学び考え議論する「学び」 との両輪を和とし、よりよい日本を築いていくための一人となって欲しい。

戦前の価値観の否定から始まった戦後社会は、復興に伴う経済重視の方針の下、合理性と成果ばかりが重視されてきた結果、物質面では驚くほど豊かになりましたが、逆に「自分さえ・今さえ良ければ」の利己主義が蔓延し、人への思いやりに欠けた心の貧しい社会となりました。その結果が1991年(平成3)のバブル経済の崩壊であり、人間の欲望が一瞬で泡となって消えていきました。

(会の発足)
その最中の1993年(平成5)、鍵山相談役の生き方に共感する人たちが岐阜県大正村に集まり、日本を美しくする会が誕生しました。集まった人たちは、「掃除」が自分の心を厚く覆う自我を取り払い、人間が本来持つ良知を目覚めさせると氣付き、物の追求では味わうことのできなかった心の充足を知ることができました。バブル崩壊による「価値観の転換」です。それまで見向きもされなかった掃除の中に、より良い生き方があることを知った掃除人は、積極的に会社や学校、地域での掃除実践を始め、暴走族の解散や荒れて手の付けられなかった学校を正常化するなどの実例にあるように、心の荒みのない穏やかで思いやりのある社風や校風づくりに貢献してきました。そしていまや掃除に学ぶ会は、全国に 100カ所以上、アメリカ・ ブラジル・台湾・ルーマニアなど海外にも支部があり、年間10万人規模の参加があるほどの活動になりました。

(三つの困難)
しかし、発足から30年弱、会は三つの大きな困難を抱えています。まず、「会の高齢化・後継者不足」です。相談役は体調を崩され、直接お会いして話を聞くことも難しくなり、また相談役に直接薫陶を受けた方々もご高齢になり、会の存続が難しいところも多くあります。二つ目が、2019年1月の「中教審答申」です。このことで、学校での掃除活動がこれまでのようにできないという試練に見舞われています。そして三つ目が、今回の新型コロナウイルスによる社会の混迷です。相談役も、この騒動の中で時間だけが過ぎて会員の氣力が萎え、会自体が自然衰微していくのではないかと大変危惧されています。

(私たちは何をすべきか)
今回のコロナウイルスの猛威は、物や金中心の経済活動を突然に縮小させる一方で、人間の心の充足へと、「価値観の転換」の必要を我々に迫ってもいます。すなわち、相談役がこれまで示してこられた「今あるものを限りなく生かしていく生き方」、「日本人が先祖代々受け継いできた日本人の美徳を守る生き方」に戻ることが求められています。60年前から日本の行き詰まりを察知された相談役は、絶大なる尊敬と実践力で先頭に立ち、世間に人間の正しい生き方について、身を削りながら警鐘を鳴らしてこられました。そのことを相談役から学んだ私たちは、「伝道者」「実践人」として、コロナ後に求められる本物の価値観を伝えていかなければならないと思います。すなわち、私たち一人ひとりが相談役の思いを引き継ぎ、より良い社会の実現のため、100人の一歩、1000人の一歩へと歩み始めることが、三つの困難を乗り越え、世の中から荒みをなくしていく道だと確信しています。

(世の中のために)
掃除に参加したことがない人たちに対して、掃除に興味を持ってもらえるように情報発信し、心の喜びに氣付いてもらえる場を設けましょう。まず、「学校教育に掃除の活用を!」の広報活動を通じて、人々に日本の伝統文化「掃除」が持つ人間形成(=道徳)への効果と意義を伝えましょう。そして、一人でも多くの方が身の回りの掃除に取り組んでいただける世の中をめざしていきましょう。日本を美しくする会の運動を、日本全国から世界に広げていきましょう。