授業で学ぶトイレ掃除

滋賀掃除に学ぶ会 後藤 敬一

自分の傲慢に気づく

1994年(平成6)、私後藤敬一は、滋賀ダイハツ販売の社長就任のその月に開かれた、岐阜県大正村での第2回日本を美しくする会に参加しました。そこで鍵山相談役が「大きなことを考えるのではなく、小さくても自分ができることを、誰もができないくらいやり続けることが大切です」と仰いました。しかし、その時は何のことか理解できませんでした。

トイレ掃除実習では、床に手をつきタワシでこするリズミカルな音に、何かが洗い流されるような気がしました。何と自分は傲慢であったことかと。そして、大きなことはできないが「掃除なら私にも続けられる」と思うと、涙があふれてきました。

翌日から、毎朝会社の全店舗のトイレ掃除を始めました。会社には、自分のことしか考えない社員が多く、ギスギスした雰囲気だったので、トイレ掃除を会社で定着させたいと思いました。幹部にもトイレ掃除の研修に行ってもらいました。

滋賀掃除に学ぶ会の発足   

そのころ全国各地に掃除に学ぶ会が出来つつあり、滋賀県でも始めたいと思いました。1996年(平成8)9月7日、第1回を、近江聖人中江藤樹先生の藤樹神社で16人で開きました。

しかし、その後学校などに会場貸しをお願いに行っても、宗教団体か何かと間違われ、断られ続けました。会場が見つかったら、今度は人が集まらない。ボランティアなので、社員に強制もできず一人でもがきました。結局約3年間休止しました。そんなとき、掃除仲間の女性から、一人で頑張らずに仲間と相談しながらやっては、という思いのこもったハガキを頂いたことがきっかけとなって、活動を再開しました。

学校支援メニュー

ある先生から「トイレ掃除の良いのはわかるが、やろうとすると反対に遭う。学校支援メニューに登録すれば、大手を振って申し込める」と聞きました。

そこで、2010年(平成22)、会はこのメニューに登録しました。常々、学校からの依頼は「断るな」といっています。いくら頼みに行っても断られた経験があるからです。最大で、月に9件の依頼が来ました。「はい」と受け、「どうやってやるか考えよう」といっていますが、やると決めると色々な知恵が出てきて、会社全体の協力体制が取れるようになってきました。

この滋賀県教育委員会の学校への出前授業などの体験学習を支援する制度についてです。

2007年(平成19)、生涯学習課に設けた「学校支援センター」は、安全、環境教育などのテーマについて、学校のニーズと地域の人や企業からの提案を、マッチングします。学外の専門技術や人材など、社会全体で子どもたちを育てるというこのメニューには、10月現在、団体181、メニュー270が登録されています。内容は、「におねっと」検索、で見れます。「総合的な学習の時間」などが使われ、掃除実習の場合は、80~120分としっかりとられています。

教育長は「トイレ掃除のメニューは続けますよ」と言われています。

支援メニューへの対応と評価

支援メニューに登録して変わったことは、まず依頼数が大きく増えたことです。登録前と登録後を比べると、前は年間10回程度だったのが、後は22回と、倍以上増えました。しかも、生徒、先生、保護者など、学校関係者の参加が飛躍的に増えました。

次が、登録前は、子どものいない休日の学校トイレを、自分磨きのためにお借りしていたのが、登録後は、授業の一環として行うために、平日開催が増えたことです。この対応として、事務局をおく当社社員が中心となり、会社定休日の水曜日に開催することが多くなりました。

人員は、会社のボランティア活動の一環としていますので、全社員で取り組んでいます。基本的にはボランティアで集まってくれるのですが、大きな学校などで指導者が足りない時は、出勤扱いとして出てくれます。一般の参加者は、土、日の開催に多く参加されますが、平日に有休を取ってきて下さる方もおられます。

トイレ掃除は、先生方の人気メニューとなりました。異動した先生が異動先でもやりたいと申し込まれたり、県全域の学校から引きも切らぬ依頼が来ます。メニューに登録してからは、開催先を探したことはありません。

先生方に負担を掛けないよう、すべてのプロセスを定型化、文書化し、効率向上とミス防止に努めています。道具は、素早く正確に取り出し、員数照合も出来るよう「見える化」を追求します。

滋賀県には、彦根、高島、滋賀と掃除の会は3つあります。大きな大会開催などでの要請があれば、滋賀の会から人員や道具を応援し、県全域で活動できる体制をとっています。

【コメント】

(編集室)

昨年2019年1月、中教審から「学校の働き方改革」に関する答申が出ましたが、文科省は必ずしも学校掃除を否定してはいないと確認できたため、日本を美しくする会では、従来より考えていたことですが、「道徳教育に掃除の活用を!」を要望していく方針としました。

実際、滋賀県は学校支援メニューを行っていますし、掃除に積極的な学校は多くあります。

「清風掃々」では、こうした事例を多くの方に知って頂くと同時に、私たちがこれに対応できる体制を作らなければならないと考え、その先行事例として、滋賀掃除に学ぶ会を取り上げました。

滋賀掃除に学ぶ会 トイレ掃除の実績

後藤 敬一
(ごとう・けいいち)
1957年生まれ。
滋賀ダイハツ販売株式会社代表取締役会長。日本を美しくする会関西ブロック長。
著書『三代目社長の挑戦』(高木書房)